2000/02/04  「花束を持った女性」

 花束を持った女性

 最近、とっても忙しい。
 今までに味わったことがないくらいに働いている。
 毎日が慌ただしく過ぎてゆき、何がなんだか分からなくなっていた。
 
 今日もいつものようにキオスクで雑誌を買って終電近い電車に乗った。
 入口に近い所にもたれながら、雑誌をペラペラめくっていると、目の前に座った女性に
 ふと目がいった。

 見た目20代後半のきれいな女性である。
 彼女はうつむきながら、周囲には気付かれないように泣いていた。
 手にはちいさな花束を持っている。
 
 何があったのかは想像もできなかったが、彼女は悲しくてないているのではないらしい。
 時折、花束を握った手に力が入る。左手の薬指には指輪‥。
 
 彼女は途中で降りていったが、しばらくホームで遠くを見つめていた‥。

 「分からん‥。」
 
 電車が走り出し、また雑誌をペラペラめくるが、そのことが気になって仕方がなかった。
 忙し過ぎて忘れかけていたが、彼女に起こった出来事を想像しているうちに、
 再び本来の自分を取り戻す事ができたのに気付いた。
 きっと、彼女は誰かに「ありがとう」を言っていた‥。
 
    そんな彼女に僕も一言『がんばれ』。そして『ありがとう』‥‥。
    感動は伝染する。

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